「筋トレ、限界まで追い込むべき?」|筋トレ 論文 まとめ サイト
筋トレを頑張る皆さん、一度はこんな疑問をもったことはありませんか?
「トレーニングは最後の1回まで限界に挑むべきなのか?」それとも「適度なところでやめるべきなのか?」
実際に、この議論は多くのトレーニング愛好家やアスリートの間で語られてきました。しかし、科学的な研究では、このトピックに関する結論は一致していません。
この記事では、最新のシステマティックレビュー・メタアナリシスの結果をもとに、「限界までのトレーニング」の効果について解説します。筋力を向上させたい方、筋肉を大きくしたい方、それぞれに適したアプローチを考えるヒントが得られるはずです。
最新の科学的なデータを論文から知って、もっと効率よく筋トレをしましょう。
この記事・筋トレ 論文 からわかること
- 「限界まで追い込むかどうか」で、筋力・筋肥大効果にどのような違いがあるのか
- 最新の論文から分かる現在の考え方
- 目的別(筋力アップ・筋肥大)におすすめのトレーニング方法
- トレーニングレベル別(初心者・中級者・上級者)の負荷の選び方
紹介する論文

筋トレで効果を出すには、やっぱりウエイトが上がらなくなるまでトレーニングしないといけないのかな?
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確かにそういった考え方は、根性論の時代から根付いているようですね。それが正しいのかどうか検証した論文があります。2022年にJSHSから出版されてメタアナリシスをご紹介します。
研究手法
この研究では、以前の論文紹介でも扱った、メタアナリシスという方法を用いました。
今回の論文では、トレーニングを限界まで追い込んだトレーニング群と追い込んでいないトレーニング群とで効果量を比較しています。
論文収集の条件
メタアナリシスでは、まずはじめに集めてくる論文の条件を設定します。
- 参加者は年齢関係なくランダムに集めている
- トレーニングを限界まで追い込んだトレーニング群と追い込んでいないトレーニング群の両方を含む論文
- 筋肉量もしくは筋力向上を評価できる指標を報告している論文
- トレーニングを6週間以上実施している論文
- 対象者が疾患や怪我をしていない
このメタアナリシスでは、
PubMed/MEDLINE, Scopus, SPORTDiscusという文献検索サイトから論文を検索しています。
それに加え、今回の論文ではサブグループ解析という手法も用いています。
サブグループ解析とは?
大規模な研究結果を、特定の条件や属性ごとに小さなグループ(サブグループ)に分けて分析する方法です。この手法を使うことで、全体の結果では見えなかった「特定のグループごとの違い」や「効果のばらつき」を明らかにすることができます。
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例えば、男性と女性それぞれのサブグループで筋肥大効果を数値化し、それを比較することは、サブグループ解析でよく用いられる手法です。
注意して欲しいこととして、このメタアナリシスでは、採用する文献の条件として限界までトレーニングする群とそうでない群を両方含んでいるということです。
今回のサブグループ
- トレーニング経験者 vs 未経験者
- トレーニングボリュームが揃っていた vs 揃っていない
- 上半身 vs 下半身
- 多関節種目 vs 単関節種目
- 限界までトレーニングする群とそうでない群で参加者が同じ vs 違う
論文精査と統計解析
続いて、集めてきた論文を読んで、本当に集めてくる条件と一致しているのかを調べます。
その後、集めた論文から筋力、筋量のデータを抽出し、効果量という指標に変換して統合します。
少し難しい話になりますので、ここでは、集めてきた論文から「どのくらい筋力UPしたか」「どのくらい筋肥大したか」をそれぞれ数値にして統合したと捉えていただけると良いです。
そしてその数値をサブグループごとにも算出し、サブグループ間の効果を比較しました。
結果・考察
論文精査の結果、15件の論文が採用されました。
筋力:限界まで追い込むかどうかは効果に影響しない
メタアナリシスの結果、限界まで反復するかしないかで有意な筋力向上は認められませんでした。つまり、
限界まで追い込んでも追い込んでいなくても効果は変わらない
ことが示されました。
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ACSM2009のトレーニングガイドラインによると、限界まで追い込む方が筋力アップが大きいとことが書かれていました。著者らにとって、今回の結果は意外だったようです。
一方、トレーニングボリュームを揃えていないサブグループでは、限界まで追い込んでいない方が筋力向上効果が大きいことが示されました。ここは少々複雑ですが、著者らの考察としては、
トレーニングボリュームを揃えていなかった研究では、限界まで追い込んでいないグループのトレーニングボリュームが大きかった可能性がある
ことを指摘しています。
ここ少しわかりづらいかもしれません。
トレーニングボリュームが揃っていなかったサブグループに含まれる研究の例を紹介すると、
Kreamerらの研究では、限界まで追い込むグループでは8-12repを1セット、限界まで反復しないグループでは10repを3setと明らかに限界まで追い込んでいないグループの方がトレーニングボリュームが大きくなっています。
これらの結果を踏まえ、著者らは、
筋力アップを目的としたトレーニングでは限界まで反復することよりも、トレーニングボリュームを大きくすることの方が重要
であると考えています。
筋肥大:限界まで反復するかどうかは効果には影響しない
筋肥大(筋肉のサイズアップ)についても、
限界まで追い込んでも追い込んでいなくても効果は変わらない
ことが示されました。
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この結果は、著者たちにとっても意外だったようです。おそらく、『限界まで追い込む方が効果的だ』と予想していたのでしょう。そのためか、考察の中にはその予想を暗示するような記述も見られます。例えば、『95%信頼区間の上限が0.55という高い値を示しており、さらなる研究が必要である』と述べています。
一方、トレーニング経験ありのサブグループでは、限界まで追い込んだ方が筋肥大効果が大きいことが示されました。理由として、
トレーニング経験者は限界までの負荷に耐えられる『上限値』が高く、その分、上限の低い未経験者と比べて筋肉が成長しやすいからではないかと考察されています。
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ここは著者らにとっては嬉しい結果だったようです
限界まで追い込むのことは本当に意味がないのか?
著者たちは、今回の結果を単純に「限界まで追い込むことは必要ない」と捉えるべきではないと論文中で述べています。
これは、このメタアナリシスの結果を正しく理解する上で非常に重要なポイントですので、ぜひ皆さんにも知っていただきたい内容です。
このメタアナリシスに含まれる15件の研究のほとんどは、60~90%1RMという比較的高い負荷を使用していました。
高負荷のトレーニングでは、トレーニング開始時から速筋線維を多く含むサイズの大きな運動単位が動員されるため、限界まで追い込むかどうかが効果に与える影響は小さいと考えられます。
一方、低負荷でトレーニングを行う場合、限界まで追い込むことがトレーニング効果を左右する重要な要因であることが示唆されています。
この違いは、低負荷では限界近くになるまで速筋線維が動員されないことが影響している可能性があります。
従って、
限界まで追い込むかどうかの重要性はトレーニングの負荷によって異なる
ことが言えるかもしれません。
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なお、このトピックについて詳細に検証した私の論文が、現在「Journal of Sports Sciences」にて査読中です。出版が完了次第、皆さまに改めてお知らせしますので、どうぞお楽しみにお待ちください!
まとめ
この論文で明らかにしたことは以下の通りです。
- トレーニングで限界まで追い込んでも追い込まなくても、筋力や筋肥大の効果に大きな違いはない
- トレーニングボリュームが同じ場合、限界まで追い込まない方が筋力が向上しやすい
- トレーニング経験のある人は、限界まで追い込んだ方が筋肥大しやすい
一方で、注意して読む点は以下の通りになります。
- 採用された論文の負荷条件
- トレーニングボリュームの影響
- 対象者の特徴
トレーニングを始めたい方に向けて、まずは自宅でできる簡単な自重トレーニングから
自宅でトレーニングの幅を増やしたい方・ホームジムを作りたい方へ
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