はじめに
私は現在、東京大学で筋肉の研究をしています。今回は筋力と筋肉量の違いについて話していきたいと思います。かなり基本的なことですが、混同している人も多い気がするので記事にしてみました。
筋力と筋肉量の違いとは?
まず言葉の定義で言うと、
筋力とは、筋肉が一回の収縮で発揮できる力
例えば、ベンチプレス1回で挙げることのできる最大重量(50kg)などです。
一方、
筋肉量とは単純に筋肉の量
のことです。
ここで重要なのは
筋肉量は筋力を決める構成要素の1つ
に過ぎないということです。
もちろん、筋肉量が多ければ、筋力は強くなりますが、それだけが筋力を決めているのではありません。
例えば、そこまで体が大きくない人(むしろ細い人)でも力強いなと感じる人に出会った経験はないでしょうか?
この人たちはどうして筋肉量が少ないのに強い力を出せるのか、筋力を決める要素に分けて解説していきたいと思います。
筋力を決める要素
筋力を発揮するには「脳からの指令が筋肉まで伝わり、筋肉が収縮する」というプロセスがあります。
このプロセスを4つに分けて解説していきます。
神経系
神経系は脳からの「筋肉を動かせ」という命令とその伝達経路が含まれます。
「筋肉を動か」という命令は、その命令の強さや頻度(何回も命令する)が大きければ大きいほど、
大きな筋力を発揮することができます。
また、伝達経路には指令の伝わりやすさが変わる性質(難しい言葉でいうと可塑性)があります
ので、命令が伝わりやすい状態になると筋力も大きくなります。
神経筋接合部
「筋肉を動かせ」という命令が、神経の端まで伝わり、筋肉に対してその命令が伝わります。
この神経の端と筋肉の結合部分を「神経筋接合部」と言います。
この結合部分での命令の通りやすさも筋力に関わってきます。
例えば、高齢者や運動を全くしていない人では、この神経筋接合部の結合が弱まっていることが多いと言われています。
筋肉量
筋肉量は筋力を大きく規定している要素であることは間違いありません。
筋肉の質
筋肉を構成している成分には、筋タンパク質の他にも水分や脂肪が含まれています。
特に脂肪に関しては、お肉の霜降りを想像していただければわかりやすいかもしれません。
また、筋肉は無数の束が集まって構成されているのですが、この束の間の筋肉外成分にも水分などが含まれています。
筋タンパク質以外の成分は筋肉の力発揮には貢献しないので、
例えば、同じ筋肉量でも霜降りや細胞外成分が多ければ、筋力は小さくなってしまいます。
まとめ
筋力と筋肉量は明確な違いがあり、筋肉量は筋力を規定する構成要素の一つに過ぎません。
筋力には、神経系、神経筋接合部、筋肉量、筋肉の質が大きく関わっていると言えます。
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